【原油ETF比較】今一番値段が上がっているETFはどれ?~原油ETFのパフォーマンスを比較してみた~
5月8日、アメリカの失業率が戦後最悪と言われる数値を示したにもかかわらずダウ平均株価が大幅に値上がりしたことが報道されています。
各国で自粛解除に向けた動きがみられだしていることもあり、株や商品に回復の兆しが見られ始めています。
原油に関してもNY原油先物価格が2週間連続で上昇しています。
原油投資のひとつである原油ETF(ETN)について考えてみました。
尚、原油ETFは仕組みが複雑であること、値動きが激しいことなどから東証などから注意喚起のメッセージが出されています。
アングル:「複雑」原油ETFが人気沸騰、東証などが注意喚起 - ロイター
原油系ETFで勝負してる人が最近増えてるけど、原油価格で勝負出来るわけじゃないので注意
— cis@株 先物 FX 仮想通貨 リネレボ (@cissan_9984) 2020年4月17日
原油を原資産とした連動商品は先物の期先と期近の価格差を減価した価値になるのよー
わかんねー!って人はNYMEXって取引所で売買されてる原油先物の値段との勝負になるってこと!
今だと来月26%上がってチャラ
原油投資の方法と国内ETFの種類
原油に投資するためには
、等があります。
- WTI原油価格連動型上場投信 <1671>
- WisdomTree WTI 原油上場投資信託 <1690>
- NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信 <1699>
- NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油ダブル・ブル ETN <2038>
- NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油ベア ETN <2039>
の5種類があります。
以下、(1671)原油連動、(1690)WisdomTree、(1699)NOMURA、(2039)原油ベア、(2038)原油ブル、と略します。
ETFのパフォーマンス比較
図1にWTI原油先物価格の推移を示しました。こちらを見ると4月20日にマイナスの価格を付けた後、上昇し、4月28日にまた極小値を示しています。
こちらを基準に各ETFの価格の変化を追っていきたいと思います。
(WTI:ウエスト・テキサス・インターミディエートの略でニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物が取引されている。)
図2に4月28日の価格を基準とした各ETFの価格推移を示します。
こちらを見るとまずWTI価格は5月8日で4月28日のほぼ倍の金額となっていることがわかります。
5月8日時点で価格の上がっている順に(2038)原油ブル、(1690)WisdomTree、(1671)原油連動、(1699)NOMURA、(2039)原油ベア
となっています。
尚、ここで各金融商品が基準にしている指標は必ずしもWTI原油先物価格ではありません。
(2038)原油ブル、(1690)Wisdom Treeがもっともよいパフォーマンスを上げており、40%程度上がっていることがわかります。
(1671)原油連動、(1699)NOMURAはそれぞれ30%、20%程度価格が上がっており、いずれの金融商品を購入していても含み益が出ていることになります。
(2039)原油ベアは原油価格が低下すると価格が上がる金融商品となるので唯一含み損が出ていることになります。
1671はWTI原油先物価格を指標として作られている金融商品ですが50%以上も指標から乖離しており、低いことがわかります。
信託報酬の差(0.5~1%程度)などとは比べ物にならないほど価格が動いていることがわかります。
なぜパフォーマンスが異なるのか?
限月の仕組み
以降、(1671)原油WTI原油価格連動型上場投信 を例に記載いたします。
いろいろな場所で報道されているように原油先物は受け渡し月ごとに価格が設定されています。
例えば、現在取引されている6月限月分は24.63ドルですが、7月限月分は26.04ドルで取引されていることがわかります。一般にWTI原油先物価格といった場合は、直近の限月の先物の価格になります。
各金融商品では、複数の限月の原油先物を組み合わせて扱っており、組み合わせや売買のタイミングがパフォーマンスに差が出る一因となっています。
例えば、(1671)原油連動では以下の表のように最近は頻繁にその組み合わせを変更していることが報告されています。
ロールオーバーによるWTI価格との乖離
ETFのような金融商品では原油を消費することもなければ、原油を受け取って保管することもありません。
そのため、受け渡し日が来る前にある限月の原油先物を売却して、さらに先の限月の原油先物を購入します。
これをロールオーバーと呼びます。
原油先物価格には保管コストも含まれているため、限月が先の商品の方が高い価格となっています。
そのため、ある日付を基準としてその後の価格変化を比較していくと指標となる価格と乖離していくことになります。
そのため、長期保有には向かない商品であり、信託報酬はほとんど気にしないでよいのではないかと考えています。
どこまで上がるのか?目安のWTI先物価格は?
原油先物ではだいぶ先の限月の商品も取り扱われており、例えば、12月限月の原油は31.75ドルとなっています。
つまり、年内に31.75ドル程度まで上がることが想定されており、ETFではその値段をどれだけ上回るかを予想することになります。
まず需要がどの程度回復するかが、重要ですが、現在の価格は減産により調整されており、政治的な要因がかなり強いです。
米エネルギー情報局(EIA)の予測では4~6月期で31ドル、2020年後半にさらに上昇、
シェールオイルの採算ラインとされているのが30~40ドル、
ロシアの予算編成の前提が42ドル、
サウジアラビアの予算編成が北海ブレントで60ドル程度(でも6%赤字)、
といった価格が目安なのではないかと考えています。
まとめ
原油ETFはロールオーバー等で利幅が薄くなったり、長期保有に向かなかったりとリスクの高い金融商品です。
また、実需だけでなく政治的な要因でも大きく価格が動きますが、一方で、歴史的な低価格にあることは事実です。
リスクをとることが好きなタイプの方には非常に熱いのではないかと考えています。